もし僕らのことばがウィスキーであったなら (新潮文庫) 価格: 500円 レビュー評価:4.5 レビュー数:43 お酒を飲むときには蘊蓄より目の前のそれに対する
イメージを大切にしたほうが、(私は)おいしく感じる。
特にウィスキーは、裏っかわに潜む世界の「奥行き」が
他のお酒と比してもだいぶ深い気がする。
無人島を想起させる豊かな野原、大海、風、灰色の雲、透き通った水、
真っ白な蒸留所、職人の少し頑固で、額に汗を滲ませた真剣な顔つき・・
島に訪れたことのない私にはどれも空想の世界だけど、
確かにそこには様々な想像世界が広がってくる。
きっと、この本を読めば、ウィスキー |
1973年のピンボール (講談社文庫) 価格: 420円 レビュー評価:4.0 レビュー数:30 村上春樹の2作目は、いいきなもんである。文庫本で171ページの間に、「煙草」が61回出てくる。語り手である主人公も鼠もスペイン語の大学講師も実によく煙草を吸う。JT(ジェームズ・テイラーではない)のまわしもんか!? それから、「まるで・・・のように」という直喩が26回も使われる。うんざりだ。そして「うんざり」という言葉が6回発せられる。「それだけだ」が9回。決定的なのは、小説を書く上で35の誤謬があるが、そのうちの32が見つかるのである。たとえば、p.25に「これは『僕』の話であるとともに鼠と呼ばれる男の話でもある。」とあるが、p.28にも「これはピンボールについての小説である。」とある。作 |
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ダンス・ダンス・ダンス〈上〉 (講談社文庫) 価格: 680円 レビュー評価:4.5 レビュー数:24 僕という主人公は34歳。結婚していた女性に逃げられ、いまは一人暮らし。社会や人生が分かりかけてきた男にとっては、仕事も生き方も優秀でなければならず、ダンスのステップを正確に踏み続け、人からもホメラレルように踊り続けることが求められという暗喩が一環して流れるのがこの小説のテーマです。そのダンスステップがいい人生、と思われることに、主人公は疑問を抱き続けることに。
札幌の「いるかホテル」で働く女性と知り合い、互いに惹かれ合う仲となっても、二人はその気持ちを素直に表現できないでいます。そのホテルで出会うことになるのが、不気味な羊男。さらには、ひょんなことから主人公の僕は、 |
ダンス・ダンス・ダンス〈下〉 (講談社文庫) 価格: 680円 レビュー評価:4.5 レビュー数:15 1:ビジネス書として。
上巻の最初の部分にプロフェッショナリズムに
基づく仕事の方法論が簡潔に述べられている。
2:世代論として。
1940年前後生まれの牧村、1950年前後生まれの「僕」と
五反田君、1960年前後生まれのユミヨシさん、1970年前後生まれの
ユキ。アメは恐らく1945年前後生まれだろう。戦後日本人の精神史を
横列配置した群像劇とも読める。
3:時代小説風ファンタジーとして。
1983年3月から数ヶ月間が舞台だが、発行は1988年の秋。
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約束された場所で―underground 2 (文春文庫) 価格: 550円 レビュー評価:4.0 レビュー数:28 現代社会への不信や嘆き、努力すれば良き世の中を作れる存在になれるという実直な勤勉さ、他人と自分は違うはずだというプライド。
こういう要素が入り混じった精神構造は、今30?40代より下の年代の日本人で「普通の優等生」だった人々には、ある程度共通する資質だと思う。若手ベンチャー社長がやたら声高に社会貢献を口にしたり、熱血サラリーマンが顧客満足に命を賭けたりするのと同じように、オウム信者達は出家信徒として世界の救済を夢見た。自分の理屈と信念を信じて周囲を引っ張る力が「リーダーシップ」と呼ばれ、政治ではそれが「プリンシプル」とか呼ばれ、持てはやされる時代。今、日本人全体 |
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神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫) 価格: 460円 レビュー評価:4.5 レビュー数:51 『アイロンのある風景』
順子に語る三宅の「火が消えて真っ暗になったら一緒に死のう」の後の
「心配するな。火が消えたら寒くなって嫌でも目が覚める」が上手すぎます。
三宅が火を優しさや希望の比喩として見てる(そして順子に対し言ってる)と
考えると、これは三宅なりの生き方指導か。
死にたいと思ってもやはり実際直面する死は寒く怖い。
ここでの焚き火の熱は環境によるもの。つまり周囲から賜る希望。
それが無くなればそのままじっと寝ていては寒い。
だから自身の体内から火に変わる熱を得ねば命を維持できない。
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