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キャッチャー・イン・ザ・ライ 価格: 1,680円 レビュー評価: 4.0 レビュー数:230 1951年に『ライ麦畑でつかまえて』で登場してからというもの、ホールデン・コールフィールドは「反抗的な若者」の代名詞となってきた。ホールデン少年の物語は、彼が16歳のときにプレップ・スクールを放校された直後の生活を描き出したものだが、そのスラングに満ちた語り口は今日でも鋭い切れ味をもっており、ゆえにこの小説が今なお禁書リストに名を連ねることにもつながっている。物語は次の一節で語りだされる。 ――もし君が本当に僕の話を聞きたいんだったら、おそらく君が最初に知りたいのは、僕がどこで生まれただとか、しみったれた幼年時代がどんなものだったかとか、僕が生まれる前に両親はどんな仕事をしていたかなんて |
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さよなら、愛しい人 価格: 1,785円 レビュー評価:4.5 レビュー数:13 村上春樹が「The Long Goodbye」に続いて「Farewell, My Lovely」を翻訳した。熱烈なチャンドラーファンの私も早速読んだ。日本人のほとんどのチャンドラーファンは英語に堪能な人を除けば、清水俊二の翻訳を通じてその作品に親しんでいると思う。私も例外ではない。つまりこの村上訳も清水訳と比較される運命にある。結論から言うと村上訳は清水訳に惜敗である。
まずタイトルの「Farewell, My Lovely」を「さらば愛しき女よ」とした清水訳は、ちょっとマヌケな村上訳のタイトルを見るに及んで、さりげないが凄いセンスであることが今になってよく分か |
中国行きのスロウ・ボート (中公文庫) 価格: 600円 レビュー評価:4.5 レビュー数:24 著者初の短編集。どれもレベルが高くて面白い。あえて挙げるなら「午後の最後の芝生」かな。長編「羊をめぐる冒険」とつながる「シドニーのグリーン・ストリート」も他のものとは毛色が違うが面白い。「ニューヨーク炭鉱の悲劇」はタイトルと本文とのつながりは一体何かと考えてしまう。 |
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ランゲルハンス島の午後 (新潮文庫) 価格: 620円 レビュー評価:4.5 レビュー数:8 1984-86年(村上氏35-37歳)に雑誌「クラッシィ」に掲載された25のエッセイ。
特に気付きを与えてくれるというのでもなく、村上春樹的なユニークな視点で捉えた事象が淡々とまったり&ゆるりとしたかわいらしい安西水丸さんの絵の伴奏付きで描かれてます。
「ゆるい時間を過ごしたいなぁ」なんて時にはお薦めできると思います。でも、自分がこの先果していつ読み返す時が来るのか、、、 |
拳闘士の休息 (河出文庫 シ 7-1) 価格: 945円 レビュー評価:4.5 レビュー数:2 初めて読む作家の短編集。たまたま手にとってちょこっと読んだら止まらなくなってしまった。
ベトナム戦争従軍の経験はないらしいが、ベトナム戦争を題材にした表題作はそのすさまじい戦場の描写がスゴい。
ボクシングとセックスとてんかん、死といったテーマを描いた暴力的な小説だが、ニーチェやショーペンハウエルといった哲学者の言葉も散りばめられていたりする不思議に知性を感じさせる小説だ。
ほかの作品も読んでみたいが、まとまった翻訳はこれ一冊のようだ。
とりあえず、私の中では今年度ベストの翻訳短編集。 |
使いみちのない風景 (中公文庫) 価格: 540円 レビュー評価:4.0 レビュー数:12 3編のショート・エッセイと写真。「使いみちのない風景」はそれ自体には意味がないが、我々の精神の奥底にじっと潜んでいる原初的な風景に結びついていて、意識の深層にあるものを覚醒させ揺り動かそうとする、という。そんな風景がきっかけでできたのが、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』と『ノルウェイの森』だという。短い文章は洗練されている。どこか外国の屋外で読みたい。 |
ノルウェイの森〈下〉 価格: 1,365円 レビュー評価:4.0 レビュー数:39 この作品には、心療病棟、自殺、失踪とういくらでも暗く深刻にすることができる要素があふれているのだが、読後は重々しさがなく、喪失の切なさのみが残った。結局、主人公の周りの自殺していった人々、その死に直面した時の苦しみも、振り返れば「過去」でしかない、そして過去の記憶は望もうと望まないと誰もが喪失していくということだと思う。 青春のはかなさや切なさを描いた傑作である。 また、派手な仕掛けはないのに、この作品の舞台の1970年前後の熱さとけだるさが混沌としている雰囲気を読者に感じさせることに、村上氏の技巧の高さがある。 |
ノルウェイの森〈上〉 価格: 1,365円 レビュー評価:4.5 レビュー数:129 20年以上ぶりに再読した。同世代の作家たちが、学生運動華やかりし頃の自分探しを
題材にして私小説的なものを世に送り出して脚光を浴びていたが、この作品は、最終
ランナーが先行者をぶち抜いてしまったように、普遍的な輝きを今でも放っている。
ストーリー性と言うよりは、複雑で不可解な人間心理の葛藤を丁寧に解きほぐして
いこうとする作者の姿勢と、性的な行為の描写を、その背景にあるものまで、文面に
浮き立たせるかのような才能が、本作品の成功の理由ではないだろうかと思った。 |
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